うつ病の症状は4つのフェーズであらわれる!世代別と女性のうつ病の特徴も紹介

メンタルケア

うつ病は、軽症のうちに治療を開始することが、早期回復に繫なげるポイントです。心の変調によるサインを、いかに見逃さないかが重要になります。

最初の軽い症状を放置すると、うつ病はどんどん悪化していきます。そして考え方が悲観的・絶望的になって、最悪の場合は自殺という取り返しのつかない事態に陥るこわい病気です。

この記事では、うつ病を理解するために、その症状について詳しく紹介します。

 

うつ病とは

うつ病は、心の病気です。心は精神医学的には、脳という臓器が活動して起きている「意識」として捉えられています。

心(意識)は複雑で深遠です。そして、心の病気である「うつ病」は、自分では気づかないうちに進行していきます。

わけもなく体が苦しい、気分が落ち込む、眠れない、食欲がないなどの状態が、一時的なものであれば心配はいらないのですが、2週間以上続くようなら医療機関で受診すべきです。

 

こんな症状はありませんか?

以下は、うつ状態のリストです。

・朝、いつもより早く目が覚める
・朝、起きた時、陰気な気分になる
・朝、いつものように新聞やテレビを見る気になれない
・服装や身だしなみに、いつものような関心がもてない
・仕事をする気になれない
・物事を決められない
・いつものように人に会う気になれない
・理由もなく不安でイライラする
・何となく先行きが不安だ
・「いっそのこと、この世から消えてしまいたい」とよく思う
・テレビがいつものように、面白く感じられない
・「さびしいので、誰かにそばにいてほしい」とよく思う
・気づくと涙ぐんでいることがある
・夕方になる気分が楽になる
・頭が重かったり痛んだりする
・最近、性欲が落ちた
・最近、食欲が落ちた

上記のような状態が長く続いている場合は、うつ病の可能性があります。ただ、ときどきある程度であれば、それほど心配はいらないです。

 

うつ病は自分では気づきにくい

うつ病の症状である「ゆううつな気分」「気分の落ち込み」「食欲不振」「不眠」などは、誰でも日常生活で経験することがあります。そのため、本人や家族、周囲の人は、うつ病だとは思わずに見過ごしがちです。

例えば、自分で、「やる気がない」「疲れやすい」と感じても、「仕事が忙しくて疲れがたまっただけ」などと解釈してしまいます。そして、家族や周囲の人は、「怠けている」「だらしがない」と見るのです。

また、本人が心の不調を訴えても、「気のせいだ」「たいしたことはない」と周囲の人が勝手に決めつけてしまうこともあります。

自分であれ周囲の人であれ、「これまでと様子が違う」と気づいた、まずは医療機関へ行くべきです。

 

うつ病は心と身体に症状があらわれる

うつ病は、脳がコントロールしている意識(心)にかかわる病気です。脳は身体全体に影響を与えるものなので、うつ病の症状は心と身体どちらにもあらわれます。

抑うつ気分に支配され、興味や喜びの感情が無くなっていきます。身体を活動させているエネルギーが低下し、日常生活にもブレーキがかかった状態になるのが特徴です。

中でも顕著なのは、「睡眠障害(不眠)」です。早期覚醒が起きやすく、熟睡できないために疲労感が消えません。ほかにも、痛みやだるさ、肩こり、食欲不振、体重減少、下痢、便秘など身体症状は多肢に渡ります。

 

うつ病の症状の4つのフェーズ

うつ病の症状は、大きく「精神的な症状」と「身体的な症状」に分けることができます。

「精神的な症状」は、さらに、「感情面の症状」「意欲・行動面の症状」「思考面の症状」の3つに分けられます。

この3つに、「身体的な症状」をプラスして、全体では4つのフェーズで症状を見ていくのが一般的です。それぞれの症状について説明します。

 

うつ病の「感情面」の症状

「感情面」の症状は、うつ病の中核となる症状です。抑うつ気分に支配され、興味・喜びの感情が喪失します。

うつ病になると、形容できないほど重苦しいゆううつな気分が、一日中、毎日、2週間以上続きます。

うつ病のゆううつ感は、嫌なことがあったときに感じるゆううつ感とまったく異なるものです。このゆううつ感は、大切な人が亡くなったときに感じる「悲しみ」とも違います。

「砂漠のようなむなしさ」であり、「何かに追い詰められているようでじっとしていられない」状態になり、キレやすくなります。

興味・喜びの感情が喪失すると、物事に対する興味や関心がなくなります。やりがいを感じていた仕事に嫌気がさし、大好きだった趣味に見向きもしません。

異性への関心もなくなるので性欲は減退し、女性はおしゃれをしなくなり、男性は身だしなみに気をつかわなくなります。

 

うつ病の「意欲・行動面」の症状

「意欲・行動面」の症状としてあらわれるのが、意欲の低下とおっくう感です。うつ病になって、心のエネルギーが枯渇してしまう状態を、医学的には「精神運動抑制」と呼びます。

強い倦怠感のため、何をするのもおっくうになり、仕事や家事が手につかない状態になります。新聞や本の活字を追うことさえ、つらく感じて長続きしません。

動きや話し方が緩慢になり、注意力や記憶力が低下して決断力もにぶってきます。気持ちばかりが焦って空回りし、重大なことをよく考えずに決めて、あとで後悔しがちです。

やがて外出が苦痛になり、それから着替えや洗顔、入浴なども面倒になります。そして、最後には、ベッドから起きだすこともできなくなるのです。

うつ病になると、それまでふつうにできたことができなくなるため、無能な人間になったと自分を責めるようになります。

自分を過度に卑下して、将来を不安に感じ、周囲の人に迷惑をかけているという罪悪感にさいなまれます。

 

うつ病の「思考面」の症状

うつ病になると、思考力・集中力が低下する「思考制止(思考抑制)」が起こります。

思考制止(思考抑制)が起こると、頭が働かなくなります。頭がさえず、ぼーっとして考えがまとまりません。

思考制止が進むと、「悪いのはすべて自分」「自分には人としての価値がない」などのマイナス思考にとらわれます。このマイナス思考は、うつ病の特徴の一つです。

無価値感や自責感が強くなると妄想的な考えが起こるようになります。うつ病性妄想には以下のようなものがあり、特に高齢者に多いとされています。

  • 被害妄想|みんなが自分の悪口をいっている
  • 忌避妄想|みんなに嫌われ避けられている
  • 貧困妄想|自分のせいで財産や地位を失った
  • 心気妄想|不治の病にかかってしまった

思考制止の進行は、黒か白かの二分割思考・両極端思考に向かっていくのが特徴です。

この極端な考え方が自己否定と結びつくと、「自分には生きている価値がない」「死にたい」などの自殺企図に向かいます。

自殺で特に気をつけなければならないのは、症状が軽くなり、行動力が出てきた時がもっとも危ないということです。

 

うつ病の「身体面」の症状

うつ病の「身体面」の症状でもっとも多いのは、早期覚醒などの「睡眠障害」です。

その他、出現率が多い順で、疲労・倦怠感、食欲不振、口渇、便秘・下痢、悪心・嘔吐、体重減少、呼吸困難感などがあります。

このような身体症状が目立ち、抑うつ気分など精神症状が見えにくくなっているうつ病を、「仮面うつ病」と呼びます。

仮面うつ病に多い症状は、不眠、食欲不振、全身倦怠感、頭重・頭痛、めまい、立ち眩み、耳鳴り・動悸などが多いです。

うつ病で顕著にあらわれるのは睡眠障害ですが、次に多いのが消化器系の症状です。食欲不振、食べる量や回数が減るために起こる体重減少、味覚異常、便秘、下痢、吐き気などが挙げられます。

また、忘れてならないのが呼吸困難感や疲労感などであり、女性では月経異常もよく見られる症状です。

体の病気だと思って内科を受診しても原因が見つからない場合は、うつ病を疑って精神科や心療内科で専門医に診てもらうことも必要でしょう。

 

世代別の症状の特徴

ここでは、世代で異なるうつ病の症状について紹介します。

 

子どものうつ病

最近では、いじめ問題の影響もあり、子どものうつ病が増えています。以前は、うつ病は性格や人格が形成される思春期以降の大人の病気だと捉えられていました。

子どもは、自分の気持ちをうまく言葉で説明できません。「悲しい」「つらい」という気持ちや体の不調を、感情的な態度や反抗的な行動であらわしてしまうことがあります。

キレやすくなる、集中力がなくなる、学校へ行くのを嫌がるなどの症状があらわれます。身体的には、朝に腹痛や吐き気、頭痛などを訴える、過食や拒食に陥るなどもよく見られるケースです。

急に元気がなくなったり、表情が乏しくなったりすることがあるので注意が必要です。特に、「自分はダメな人間だ」「もう、どうしようもない」などの言葉を使うようになったら、医療機関に相談に行くべきです。

 

思春期・青年期のうつ病

一般的に、10歳前後から17~18歳ぐらいまでが思春期、18歳から23歳頃までが青年期と考えられています。

この時期は、急激な体の発育や性の成熟などがあり、身体的にも精神的にも非常に不安定であるとされます。

この思春期・青年期のうつ病は、ゆううつ感や自責的傾向というよりも、「疲れやすい」「何をするにもおっくう」「集中力がなくなる」などが多いです。

「引きこもり」や「暴力をふるう」という問題行動が起こったり、まれに「幻覚」や「妄想」があらわれたりすることもあります。

基本的な症状としては、不眠、頭痛、朝起きられない、だるいなど大人の症状と大きく変わることはありません。ただ、自分が病気であるという意識(病識)に欠けていることが特徴です。

思春期・青年期のうつ病は長期に渡ることが多く、その時間の経過とともに他の心の病気に変わっていくなどの難しさもあります。

 

中年期(男性)のうつ病

中年期(概ね40~50歳代)は、人生の中で、もっとも活動的な時期であるとされています。仕事の面でも「働き盛り」の年代と考えられています。

同時に、責任が重くのしかかり、ストレスをため込みやすい年代です。

体力や記憶力の衰えを自覚し始める頃であり、健康診断で高血圧や糖尿病などの生活習慣病が見つかるようになる年代でもあります。

この時期のうつ病の典型的な症状としては、どうしようもないほどのゆううつ感、気がふさいで晴れない、強い不安感や焦燥感、悲しさや苦しい気持ちを抑えられないなどが挙げられます。

注意してほしいのは、うつ病による自殺が一番多いのは、この世代であるということです。また、気持ちを紛らわすために「アルコール依存症」なるケースが多いのもこの年代です。

 

老年期のうつ病

老年期(65歳以上)は、老化による身体全般の機能低下、退職などによる生活環境の変化、親しい人との別離による喪失感や孤独感などを経験する年代です。

このような老化や別離の影響もあり、65歳以上の人の10~20%がうつ病にかかっているとされ、30%の方にうつ状態が認められると報告されています。

老年期のうつ病は、妄想を伴いやすく、不安・焦燥が強い、ヒステリー症状を起こしやすいのが特徴です。

イライラとして、じっと座っていることができない、ウロウロと室内や廊下を歩きまわるなどの症状が見られます。その他、食欲の低下による体重の減少、頭痛、めまい、心悸亢進、胃腸障害、睡眠障害など、さまざまな症状があらわれます。

また、同時期にあらわれやすくなる「認知症」との関連性を考慮する必要があるのも、老年期のうつ病の特徴の一つです。

 

女性のうつ病

女性は男性より「うつ病」にかかりやすいとされ、患者数は男性の2倍といわれています。

女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、うつ病に深くかかわるセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きに作用していることが分かってきました。

妊娠や出産などのライフイベントによる環境の変化が、エストロゲンなどの女性ホルモンの産生に影響することが、女性のうつ病を多くしている要因だとされています。

女性特有の気分障害(うつ病は気分障害の一つ)として知られる以下の4つについて紹介し、女性はうつ病にかかりやすいとされる理由について迫ります。

  • 月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)
  • マタニティー・ブルー
  • 産後うつ病
  • 閉経期うつ病、閉経後うつ病

 

月経前症候群、月経前不快気分障害

月経前に体調や気分がすぐれなくなることはよくあることですが、それが生活に支障を起こすほど強い場合は、「月経前症候群」や「月経前不快気分障害」と呼ばれます。

主な症状は以下のようになります。

  • 気分の落ち込み
  • イライラ感
  • 不安感
  • 情緒不安定
  • 集中力の低下
  • 食欲の亢進または減退
  • 頭痛、乳房痛
  • のぼせ、めまい
  • 腰痛、下腹部痛

これらの症状は、月経の数日から1週間ほど前からはじまり、月経直前にピークを迎えます。そして、月経開始とともにおさまります。

月経前症候群は、女性の20%~50%が経験するとされる症状です。

月経前症候群がさらにひどくなり、月経周期ごとに1年以上続く場合、月経前不快気分症候群(PMDD)と診断されます。

起こる理由は明確にはわかっていないのですが、下垂体ホルモンと卵巣ホルモンとの複雑な相互作用によって起きていると考えられています。

 

マタニティー・ブルー

ベイビー・ブルーとも呼ばれ、出産後の女性に見られる、比較的軽いうつ状態のことです。産後2~10日目ごろに発症し、それほど重症にならずに、1~2週間程度で落ち着くのが特徴です。

発症の原因は、妊娠中に増加していた女性ホルモンが、出産によって急激に低下してバランスが崩れることが一因とされています。マタニティー・ブルーの頻度は、9~25%程度となっています。

以下のような症状がよく見られます。

  • 軽い落ち込み
  • 涙もろさ
  • 疲労感
  • 不安感
  • 焦燥感
  • 不眠
  • 集中力の低下

症状が軽いので単なる産後の疲れとされ、発見が遅れがちになるので注意が必要です。放置すると重症化することもあります。

 

産後うつ病

マタニティー・ブルーよりも症状が重篤になり長引く場合は、産後うつ病が疑われます。産後うつ病(産褥期うつ病)は、産後2~5週間で起こることが多いです。

以下のような特徴的な症状があらわれます。

  • 不安感やイライラ感が強い
  • ゆううつ感
  • 不眠
  • 育児に対して自信がなくなる
  • 育児に無関心になる

産後うつ病は放置すると治るのに時間がかかることが多いのが特徴になります。また、この病気が要因となって、母子心中や子ども虐待などの事件に繋がることもあるので適切な治療が重要です。

 

閉経期うつ病・閉経後うつ病

閉経を迎えて女性ホルモンの分泌が減少し、卵巣機能が低下する時期を「更年期」といいます。更年期では女性ホルモンのバランスが乱れ、不定愁訴などの「更年期障害」が起こりやすいです。

また、この時期の女性には体調不良だけでなく、子どもの自立、老いへの不安、近親者の介護や死など環境面の変化も多くなります。そのため、ストレスを受けやすく、うつ病を発症する方が少なくありません。

この時期の女性のうつ病は、閉経期うつ病や閉経後うつ病と診断されることが多く、以下のような症状をともないます。

  • 不眠
  • 気分の落ち込み
  • イライラ感
  • のぼせ、ほてり、発汗
  • 頭痛
  • めまい
  • 疲労感、倦怠感

閉経期うつ病は、更年期障害の不定愁訴と見わけるのが難しいとされ、治療が遅れてしまうことあるので注意が必要です。

閉経期うつ病や閉経後うつ病、更年期障害、どちらにも知見のある心療内科医や婦人科医に相談することがポイントになるでしょう。

 

まとめ

うつ病について、主に症状面にフォーカスして紹介しました。内容は、以下のようになります。

  • うつ病の概要
  • うつ病の症状の4つのフェーズ
  • 世代別の症状の特徴
  • 女性のうつ病

うつ病の症状では、抑うつ感、不安や焦燥感、意欲の低下などが代表的な症状とされます。

また、睡眠障害や内蔵器官の不調などの身体面の症状、口数が少なくなったり外見や服装を気にしなくなったりなどの行動面の症状などもあり複雑で多様です。

このような特徴があるため、他の病気を疑われることも多く、それがうつ病の治療開始を遅らせる原因になることもあります。

うつ病に限ったことではありませんが、十分な実績と最新の学識を兼ね備えた専門医を探すことが、早期回復のポイントの一つになることは間違いありません。

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参考文献
患者のための最新医学|うつ病改訂版 高橋書店
健康ライブラリー|名医が答える!うつ病治療大全 講談社

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