強迫症は観念にとらわれ行為をくりかえす!症状・原因・治療法を紹介

メンタルケア

 

 

壁にポスターを貼り付けるとき、少しでも斜めだと気になって、何度も付け直してしまう。

繰り返しているうちに自分の目は直線が曲線に見えるのではと不安になり、また付け直すから1枚のポスターを貼るのにすごい時間がかかる。

たまに手書きで数字や文字を記入するとき誤字でも脱字でもないのに、書いた数字や文字の形が気に入らず、書いては消し書いては消しを繰り返してしまう。

間違いなく戸締りをしたと自分で分かっているのに本当にちゃんと施錠できているか不安になり、数歩歩いては戻って戸締りし直し、また少し歩いては戻るということを繰り返している。

以上のエピソードは、現在進行中の、私の強迫的(!)行動の一例です。私がこのような行動をしていることに周囲はまだ気づいていません。

幸い、今のところ日常生活に大きな支障は起きていないので、強迫症とは言えないでしょう。

強迫症は、強迫観念にとらわれ強迫行為を繰り返してしまう病気です。

それが日常生活を困難にするほど重篤になると、医療機関を受診しなければなりません。

この記事では、強迫症の症状・原因・治療法について紹介します。上記エピソードと似たような行動に心当たりのある方は必見です。

 

強迫症のさまざまな症状

 

 

 

強迫症は、「とらわれの病」とも言われています。いきすぎた考えや、つじつまの合わない考えにとらわれ延々と同じ行為を繰り返してしまうのです。

まず、強迫症の症状について紹介します。

 

強迫観念と強迫症状の悪循環

 

強迫観念と強迫行為は、別々に捉えると大きな問題ではないのです。この2つが影響し合って悪循環を引き起こすことが問題なのです。

 

トイレに行き用をたす
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自分の手は汚れたから、このままでは手についた汚れで周囲の人を病気にする(強迫観念)
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一生懸命に手を洗う(強迫行為)
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手を洗ったおかげで誰も病気にならなかったから次からも必ず一生懸命に手を洗うべきだ
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繰り返すうちに習慣化して抜けだせなくなる
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自分でコントロールすることが困難になる

 

悪循環が習慣として定着し、自分では止めることができなくなってしまうのです。これが強迫症です。

手を洗って清潔にするという本来の目的が失われ、「手を一生懸命洗う」という行為が「儀式化」され、その儀式なしでは不安で仕方がなくなります。

自分でしている行為なのに、自分で止められなくなるのでは、生活に支障がでてしまいます。

 

汚れることへの恐怖が消えない

 

強迫症で一番多いのが、汚れることへの恐怖です。

汚いと思う物に、ほんの少し触れただけでも、完璧に汚れを落とさないと自分も大切な家族も汚染されてしまうという考えに支配されてしまうのです。

恐怖感から、手や体を長時間洗ったり、汚染されたと感じるものを拭いたりし続けます。特定の人を不潔と感じて、トラブルを引き起こすこともあります。

こういったことが連続して起こり、疲れ果て、自分の部屋やベッドという「聖域」から出られなくなる人もいます。

自分の「聖域」には、家族さえ立ち入らせなくなり、昼夜を「聖域」だけで過ごすようになるのです。

しまいには、「聖域」を汚したくないあまりに、ソファで寝る人もいます。自分自身さえ、汚染の対象としてしまうのです。

 

行為をくりかえさずにいられない

 

誰にも迷惑をかけたくないから、間違いなくできたかを確認する行為をくりかえすのも、強迫症に多い症状です。

戸締りや火の元、誤字脱字や連絡ミスなど、自分のせいで家族や会社の人に迷惑をかけたくないという不安に支配されてしまうのです。

大切な書類を、ゴミに紛らせて捨ててしまうのではという不安から逃れられず、ゴミ袋に囲まれて生活をする人もいます。

忘れ物が不安で、チェック表を作っても、そのチェック表が正しいのか不安になってしまいます。戸締りを撮影して不安になったら見返すという工夫をしても、仕事中に何度も見返して、仕事が手につかないということが起きてくるのです。

強迫行為に対する対策が儀式化し、ちゃんとできたかどうかが気になって、さらなる不安の原因になってしまうのです。

 

生活を壊しかねない様々な強迫症

 

強迫症には、ここまで見てきた以外にも様々な症状があります。日常生活を壊しかねない症状です。

 

・「大丈夫」「OKだよ」という保証の言葉に執着する
・確認不足によるミスが怖くて1行読むのに何十分もかかる
・運転中に加害者になるのが怖くて運転ができなくなる
・大切な赤ちゃんに危害を加えるのが怖くて育児ができない
・不安になる場所や状況を避けるために仕事に支障がでる
・不吉な数字や言葉にとらわれ打ち消すための「儀式」にとらわれる
・痴漢の報道を見て同年代の男性を見ると怖くなってしまう

 

このような症状が起きると、日常生活を送るのに明らかな障害となってしまいます。

何かのきっかけで父親が不潔に思えて一緒に生活できなくなったり、「聖域」に入ってきた家族に暴力をふるったりすることも、強迫症の症状としてよく見られることです。

 

 

強迫症の原因は不特定

 

 

「強迫症の原因は、よくわかっていない」というのが現状です。いくつかの要因が絡み合って発症するという考え方が主流になっています。

もって生まれた体質、脳の神経回路の誤作動や機能低下、育った環境などが関係しているとされています。その他にも、ストレスや生活習慣、他の精神科の病気や感染症が関連しているとする研究者もいます。

ここからは強迫症が発症する要因について見ていきます。

 

強迫症と性格とに関係はあるのか

 

性格だけが原因で強迫症になる人はいませんが、「完全主義」「几帳面(きちょうめん)」「責任感が強い」という性格の人に、強迫症を発症する人が多いという傾向はあるようです。

しかし、「完全主義」「几帳面」「責任感が強い」という性格は、長所として捉えられることも多い性格です。

そういう性格を否定的に考えるのではなく、個性として前向きに捉えて、どこで行き過ぎたのかを考えることが重要なのです。

 

強迫症と脳機能とに関係はあるか

 

強迫症の症状が現れているとき、無意識レベルの情報処理や記憶に関係する部位の神経回路が、過剰に働いていることが分っています。

このとき、セロトニンが不足していて、脳機能が正常な働きをできないことも分かっています。セロトニンの働きを助ける薬を使うと強迫症が落ち着くのです。

セロトニンは、精神の安定をもたらす神経伝達物質としておなじみであり、セロトニン不足が強迫症の原因というのは有力であると考えられます。

しかし、まだ仮説の域を出ていないというのが現状です。

 

強迫症の家族に同じ傾向はあるか

 

強迫症は遺伝するのかという点については、研究者の意見が分かれています。ただ、特定の遺伝子による遺伝病ではないというのが大方の見方になっているようです。

ですから、両親のどちらかが強迫症でも、子供が必ず強迫症になるというわけではありません。

病気そのものが遺伝するのではなく、病気になりやすい体質が伝わっているという考え方です。

また、家族ということで、同じような生活環境や価値観、行動パターンが影響しているとされているのです。

 

強迫症が発症するきっかけは何か

 

強迫症は、ここまで見てきたような素地や環境にある人も、きっかけがなければ発症しないとされています。

きっかけになりやすい出来事としては、身近な人の死や事故、進学や受験、就職や引越しなどが挙げられます。特に女性の場合は、結婚、妊娠、出産などのライフイベントもきっかけになるようです。

ただ、本人がきっかけを認識しているのは半数で、残りの半数はきっかけが定かではありません。

いずれにしろ、強いストレスを受けたり長期間ストレスにさらされたりすることが、きっかけになることは間違いありません。

 

 

強迫症の治療の柱は2つ

 

 

 

強迫症の治療は、薬物療法と認知行動療法の2本柱で行われ、通院での治療が一般的となっています。

治療の流れをまとめました。

 

・医師の問診により強迫症であると診断(診断基準あり)
・医師による「心理教育」と呼ばれる病気と治療についての説明
・薬物療法を先行させ認知行動療法による治療も随時開始

 

心理教育は、患者や家族が強迫症という病気について理解を深めると同時に、医師に対する信頼感を醸成する手段として活用されています。

 

薬物療法に用いられる薬剤とは

 

強迫症の薬物治療の中心となるのは、抗うつ薬の一種である、SSRIです。

SSRIとは、選択的セロトニン再取り込み阻害剤全般のことで、セロトニンの量を減らさないようにする薬です。強迫症は、セロトニンの働きが低下しているときに発症すると考えられています。

セロトニンは、様々な心の病に関係しているとされる神経伝達物資です。

主な有効成分としては、フルボキサミンとパロキセチンがあります。うつ病を併発している場合は、うつ病の改善も期待できます。

急に増やすと副作用の心配があるので、様子を見ながら、1~2週間おきに量を増やしていくのが一般的です。

 

認知行動療法の目的と進め方とは

 

認知行動療法とは、強迫症の人の考え方の癖を修正し、行動を変えることで悪循環を断ち切るために行います。パニック障害や社交不安症、うつ病の治療にも用いられる療法です。

強迫症の治療では、認知行動療法の中でも、主に曝露反応妨害法が用いられています。

曝露反応妨害法とは、不安や恐怖を引き起こす物事にあえて向き合い(曝露)、対象に反応して起こしてしまう行動をしない(反応妨害)という治療法です。

対象に対して反応しないままでも、何も起こらないという体験を繰り返すことで、患者は安心することができます。

この体験を最低でも30分以上、通常は60分から90分継続します。これを繰り返すことによって、強迫観念と強迫行動を切り離していくのです。

 

 

強迫症|まとめ

 

 

強迫症は、とらわれの病です。自分自身でつくってしまった観念にとらわれる病気です。

ただ、他の心の病と同じように、強迫症の原因も脳の機能障害やセロトニンが関わっているとされています。

心の病気は目に見えないからと怖がるのは、時代遅れです。

薬物治療でセロトニンをコントロールしながら、認知行動療法で意識的に強迫症と取り組んでいくという姿が現代的であると考えます。

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