依存症が増えている!ゲーム・摂食障害・セックスの依存は治療できる

メンタルケア

 

依存症は、心と体に影響を与える現代病です。

依存症を発症するきっかけは、痛切な寂しさや孤独感、誰にも受け入れてもらえないという疎外感、大切な何かを失ったときの喪失感だとされています。

これらの気持ちや感情は、生きていれば、誰もが一度や二度は経験することでしょう。いいかえれば、どんな人も依存症になる可能性があるということです。

社会が複雑化するにつれ、依存症の対象は拡大しています。

一昔前までは、依存症の対象と言えば、アルコールや薬物でした。現在では、ゲームやスマホ、ネットへの依存、万引きや性に依存してしまう人が急速に増えています。

依存症について知識を深め、自分自身はもとより、大切な家族や友人を依存症から守らなければなりません。

 

 

依存症とは何か

 

 

依存症とは、特定の対象に執着して、抜けだせない状態になっていることをいいます。

対象によって得られる快感や興奮が忘れられなくなり、悪いことと分かっているのに繰り返すことを止められなくなるのです。

依存症の概要について見ていきます。

 

最初は軽い気持ち

 

 

どんな依存症も、最初はちょっとした気晴らしから始まります。

そして、「今日だけだから」「1回だけだから」「もう終わりにするから」と自分に言い聞かせながら、結局同じことを繰り返してしまいます。

寂しさや嫌なことを忘れるために、ささいな軽い気持で始めた、薬物・ギャンブル・アルコール・ゲームなどに依存してしまうのです。

自分で抑制ができて、日常生活にも影響を与えないレベルであれば依存症ではありません。家族や仕事をかえりみることができなくなったら、依存症を疑うべきです。

 

対象は物・行為・人

 

 

依存症の対象は、大きく3つに分けることができます。物と行為、そして人です。

  • 物|アルコール、薬物、ニコチン、カフェイン、スイーツなど
  • 行為|ギャンブル、ゲーム・スマホ・ネット、性(痴漢・盗撮など)、過食・拒食など
  • 人|家族、DV・虐待、セックスなど

薬物には、覚せい剤や麻薬だけでなく、医師が処方する精神安定剤や睡眠薬なども含まれます。

行為の対象として、通販やネットショッピングなど買い物に対する依存が増加しているのが最近の傾向です。

人に関する依存は一番身近な家族への依存が多く、また、恋愛やセックスも依存の対象となります。

以上の3つが、複雑にからみあって、症状として現れることもあります。

 

行動に特徴がある

 

 

依存症の人には、4つの特徴があるとされています。

  • 強迫性|一つの考えに執着し衝動を押さえることができない
  • 反復性|悪いことだと分かっていても何度も同じことを繰り返す
  • 衝動的|衝動的にのめり込み冷静に考えて行動することができない
  • 貪欲性|対象について貪欲に追求し諦めるということがない

依存症の人には、以上の4つの特徴的な行動が同時に存在します。

これらの行動は周囲の人、特に家族を巻き込み、平穏な日常生活を破壊します。

 

なりやすいタイプ

 

 

依存症の人は、自己不全感を抱いていることが多いとされています。

自己不全感とは、自分は不完全な状態にあり、満足できるようなことは一切できないという感情です。自分は無価値であると考え、自己嫌悪につながっていきます。

自己不全感を抱きやすい人のタイプをまとめました。

  • 嫌なこと苦手なことが起きると「逃避」する
  • 自己評価が低く周囲からのプレッシャーに弱い
  • 人とのコミュニケーションをとるのが苦手
  • 衝動的で他人の言うことを聞かない
  • 情緒が不安定で物事が決められない

自己不全感から解放されるために、依存する対象にのめり込んでいくのです。

 

心と体の現代病

 

 

依存症が増えている要因として、社会の変化を挙げる研究者は多いです。

自己中心的で自分本位な考えを「自由」とはき違えて、困難なことに向き合っていく心の耐性が失われ、逃避する場所を求める人が多くなっていると報告しています。

  • ネットやメディアの発達で人間力が損なわれている
  • 家庭や学校で社会生活の基本が教育されなくなった
  • 情報が氾濫し欲求だけが肥大化して抑えられない

スマホ1台あれば大抵のことができるほど、世の中が豊かで便利になったのは良いのですが、以上のような人が増えて依存症にはまってしまうケースが多くなっているのです。

依存症によって、自分や家族の体を傷つけたり、会社や地域に迷惑をかけたりする前に医療機関を受診するべきです。

 

 

依存症の種類と治療

 

 

依存症は、物質依存、行為依存、人間関係依存の3つに大別することができます。この3つがからみ合い、問題をより複雑にしている場合も多いです。

各依存症の代表的な症状と、その治療の概要を紹介します。

 

物質依存症

 

 

物質依存の代表的なものが、アルコールと薬物に対する依存です。

また、「痩せたい」という願望からダイエットにこだわり、拒食と過食を繰り返す摂食障害も「食べ物」という物質に関わる依存症といえます。

 

アルコール

 

1日に3合以上、朝から飲む人は要注意です。

アルコール依存症では、かつてのような、飲酒すると暴れたり騒いだりする「酒乱系」は少なくなったとされています。連続飲酒発作や社会的問題行動があまり見られない「静かな依存症」が増えているのです。

治療の前提は、「断酒」です。同時に補助として、抗酒薬や減酒薬が処方されます。

体験者ミーティングや自助グループへの参加が、断酒を継続させる有効な手段として推奨されています。

 

薬物

 

薬物乱用者は低年齢化し、検挙者の7割が30歳代以下です。

薬物に関する情報は、事実とフィクションが入り乱れたまま世の中に氾濫しています。ネットの発達で入手しやすくなり、遊び感覚で使用するため罪悪感も薄れがちです。

シンナー・危険ドラッグから麻薬、覚せい剤へ進むというのが、暗黒の定石となっています。

断薬とミーティング参加が、脱薬物のスタートです。

 

摂食障害

 

摂食障害は、思春期から青年期の女性に多い依存症です。「痩せる = 美しくなる」ことで周りの人から愛されるというのが、摂食障害になる女性たちの考えです。

「美しなって愛されたい」という願望がベースになっています。

体型に関して異常なこだわりを持ち、体重が増えることに強い不安を感じます。充分に痩せているのに、本人は実感が持てません。

ダイエット後に食欲が旺盛になって過食する、その後罪悪感にさいなまれて、また拒食するということを繰り返すケースがほとんどです。

専門のクリニックを受診し、自助グループに参加することで、自分を見つめ直すことができるようになります。

 

行為依存症

 

 

行為依存症の症例として、ギャンブル、ゲーム・ネット、性衝動について紹介します。

 

ギャンブル

 

パチンコ・スロット、競馬・競輪・競艇など、ギャンブルにはまり込んでしまう人には共通点があります。

  • 対人関係が苦手で現実逃避する
  • 現実での成功体験に乏しく不満がある
  • 日々の努力ではなく一攫千金を妄想する

このうち一つでも当てはまる人は、ギャンブルに近づかないほうが賢明です。

ギャンブル依存症が厄介なのは、勝っても負けても興奮するという点です。行為自体が快感となってしまい、誰に言われても止まらなくなり、借金をしてでもギャンブルを続けようとします。

体験者が自分の体験談を、お互いに聞き合うグループミーティングが最も効果的な治療とされています。同時にギャンブルに特化した自助グループに参加することをおすすめします。

 

ゲーム・ネット

 

ゲーム・PC・スマホへの過剰な傾倒は、対人障害を引き起こします。

仮想世界での、(誰かが造った)バーチャルな対人関係に慣れていくほど、生身の人間の微妙な表情や言動の機微が読み取れなくなるのです。

一日中ネットやゲームに夢中になり、学業や仕事がおろそかになる人が急増しています。WHOが「ゲーム障害」を国際疾病と認定したほどです。

同じ体験をもつ人たちとのコミュニケーションによって、自分の考え方や行動のゆがみに気づき、生活を立て直すしかありません。

 

性衝動

 

強迫的な性衝動をコントロールできなくなるのが、性依存です。

性衝動によって起きる、風俗通い、浮気、性的マゾヒズムなどは法に触れることはありませんが、痴漢行為、盗撮、露出症などは刑法や迷惑防止条例などで裁かれることになります。

性依存者に共通するのは、女性の感情に対する無理解、無関心です。また、内向的な性格の人が多く、人間関係をうまくこなせないタイプが多いとされています。

性依存の治療に有効とされるのは、家族の理解と支援です。

ただ、性依存に関しては性別や立場で捉え方が違うため、性依存者の父親、母親と妻などでグループ分けされることが多いという特徴があります。

 

人間関係依存症

 

 

人は生きている限り、様々な人間関係の中で過ごしていきます。この人間関係にゆがんだ形で依存してしまうのが人間関係依存症です。

ひきこもり、DV、セックスの3つの人間関係依存症について見ていきます。

 

ひきこもり

 

ひきこもりは、医学上の診断名ではなく、社会一般で使われる状態を表す言葉です。

精神的な病気が原因の場合を除いて、ひきこもりを「家族依存症」と考える医師が多くなっています。特に、母子の相互依存が引き金になりやすいとされています。

母親の「愛情という名の支配」が、過保護と過干渉という形で現れ、自立できない子どもを生みだすという考えです。

父親と母親が、それぞれムチとアメの役割を演じて、ときには子どもを突き放すことが必要です。

それも、できれば思春期に入る前の、小学生高学年くらいから意識して実践されることをおすすめします。

現在では、通信制でサポートしてくれる教育機関も存在します。家族だけで悩まずに、公的機関に相談してみることが重要です。

 

DV

 

ほとんどのDV(ドメスティック・バイオレンス)には、パターンがあります。

  • 夫(男性)の暴力
  • 夫(男性)の謝罪と妻の許容
  • 夫(男性)の不安・不満の蓄積
  • また、夫(男性)の暴力

そして、②③を繰り返す

これが、DVのパターンとされています。

「夫(男性)は暴力をふるうが本心は私を愛している」
「暴力でしか気持ちを表現できない弱い人」
「私がそばにいないと生きていけない人」

このように考える妻が意外なほど多い現状も、DVの連鎖が止まらない理由の一つになっています。前述の、相互依存の関係に陥ってしまっているのです。

この泥沼から抜け出すためには、現在の環境から離れることが先決です。身近に「駆け込み寺」のような場所がなくても、まず、公的な機関に勇気をもって相談してみるべきです。

避難場所には、必ずたどり着けます。

 

セックス

 

セックス依存症も、他の依存症と同じように、心の問題が原因です。性犯罪や性嗜好とは無関係です。

短期間に、常識では考えらえない数の異性とセックスをします。そして、した後に、むなしさと共に後悔します。

相手から愛してもらうことしか考えられず、情緒不安定な人が多いとされますが、幼少期の家庭環境が影響を与えているとする医師が多いです。

セックス依存症の場合も、治療はグループミーティングが中心です。同じような症状の人と話すことで、自分の今の症状を認識できるようになります。

ただ、セックス依存症を自覚できる人はいないということが、この依存症の厄介なところとされています。

大抵は、不眠や人間関係が上手くいかないなどの理由で受診し、セックス依存症と診断されることが多いのです。

 

 

依存症|まとめ

 

 

依存症は、心の満たされない部分から逃避するために発症するとされています。

どの依存症の治療も、同じ症状を持つ人たちとのグループミーティングが中心です。医師やカウンセラーの言葉よりも受け入れられるからです。

特に問題なのは、複数の依存症を同時に抱えてしまったときでしょう。アルコール依存症の夫のDV、ひきこもりのゲーム依存症などの場合です。

こうなると、本人には自分の現状を認識する意志は働きません。家族が、公的な機関か専門のクリニックに相談することから始めるしかないのです。

マスコミなどでは、依存症によって何度も同じ過ちを繰り返す人がよく紹介されます。

しかし、その何千倍の数の人が、周囲の愛情によって依存症の泥沼から這いだすことに成功していることを忘れてはいけません。

 

 

 

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